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最高裁判所第二小法廷 昭和27年(オ)1013号 判決 1954年11月26日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士加藤俊徳、同加嶋五郎の上告理由第一点ないし第四点について。

原審は、太陽計算器株式会社の設立に際し、上告人が定款記載の如く本訴物件をもつて現物出資をすることとし、その頃右現物出資の履行を終つた事実を認定しているのであつて、なんら定款作成後に右現物出資をやめ上告人が全額金銭出資による払込をなしたような事実は認定していないのである。ところで定款記載の現物出資の引受およびその履行が真実なされたかどうかを判定するについては、一般の証拠法則に従い人証その他諸般の証拠によりこれを認定し得ることは当然であり、所論の如く右事実は会社設立のため作成された書類によつてのみ決定しなければならぬと解すべきいわれはないのである。而して原審挙示の証拠によれば、前記原審の認定は十分首肯することができるのであつて、論旨引用の甲第二号証、第三号証の一、二、第四、第一一号証等は原審認定の如き事情により作成されたことが肯認できるから、右書証等によつては未だ所論の如く前記原審の認定を不当とし、本件現物出資が履行されなかつたものと目するに足りない。(会社設立の際の現物出資は定款に記載しなければその効力を生じないが、定款以外の書類に記載することはなんら現物出資の有効要件でないから、たとえ所論の如く定款以外の書類たる株式申込証等に現物出資の記載を欠いても、これがため、真実なされた現物出資自体の効力を否定するを得ないことはいうまでもない)。また原審が所論乙第二号証についてなした判示も相当として是認することができる。なお論旨第四点前段は判断遺脱をいうが、所論準備書面の記載は結局本件現物出資の履行のあつた事実を否認し、右否認の内容を敷衍したものにすぎないから、すでに原審が右現物出資の履行のあつた事実を認定している以上、右準備書面記載の如き主張について一一判示する必要のないことは言を俟たない。要するに原判決にはなんら所論のような違法はなく論旨はすべて採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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